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選評
今回は二千六百八十五名の投句があり、先ず手落ちのないよう慎重にセレクトしたつもりでも、ミスをおかす場合もあるから責任の重さを痛感する、とりわけ沢山の作品の中で目についたのは、どこかの大会や句集などですでに発表されたものと、そっくりな句が意外に多くてがっかり、こうした作品を、うかつに拾ったら大変な結果になるので怖くなる、そのほか、課題にこだわり過ぎて、用語の活用を勘違いされ、的外れになっているものや、単なる情景描写に終始した作品は、取り上げられないのでご容赦願いたい。
要は不自然な形でなく、出来るだけ述語を主語に近づけ、読む側にすぐわかるようにして頂きたい。
そこで、課題の「晴れる」について一口触れて見たいと思う、この語源は、そこを塞ぎ覆っていたものが、消えて無くなり、すっきりとした状況になる意味から、自然現象として霧や雨に対して用いるが、精神現象にも転用される、、ちなみに自然現象の場合「空が晴れる」状態から、さらに雲が空を覆っていない青空の多い状態であるときは「晴れる晴れている」名詞形「晴れ」を用いる。なお精神現象の場合は、心の状態も「晴れる曇る」でたとえられる、心に掛かっていた曇りや気掛かりなどが取れて、さっぱりと明るい気分になる。自身の精神を言語に立てて「気が晴れない」「晴れやらぬ心」のように言う。「気晴らし」「晴れやかな気分」などもここからの派生語である。
秀句三句は、それぞれ発想は勿論、的確な借辞を活かし微妙な心の揺れが伝わってくる人物像を捉えて見事である。
青木晴嵐

 

 

 

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